以前のお話で生地には大きく分けて「織物」と「編み物」がある、とお伝えしました。
どちらも特徴があり、それぞれに優れているところと、ちょっと苦手な部分があります。
今回は織物について、その特徴を生かした事例をご紹介したいと思います。
織物の特徴は経糸と緯糸(たていと・よこいと、と読みます)を交差させて作ります。
昔の手仕事の機織りのシーンでよく出てくるのが、奥から伸びている何本かの糸を2つに分けて上下を切り替えながら巻いた糸を左右に通していく場面。あれが高速の機械で自動で行われていると考えていただければと思います。
織物の特徴は高速で機械が動きますので短い時間の中で大量の生地が生産できることですが(といっても海外の最新鋭の機械に比べれば遅いのですけどね)、その一方で一度に大量につくらないといけない、ということも言えます。その理由は。。。
スピードが速いから一度にできるというだけではありません。
実は育児工房がお願いしているガーゼの生産で言いますと、経糸は一度セットすると何千~何万m織るまで変えることができないので(セットが大変な作業であるためです)、どうしても大量生産になります。
しかし、ここにもちょっと裏ばなしがありまして、経糸は変更が大変なのですが、それに対して緯糸の変更は比較的簡単なようです。と言いますのも、以前織物工場の社長と話していて「経糸の変更は10万円出してもらっても嫌だけど、緯糸の変更は区切りのいいところでよかったら別料金をもらわなくてもやってあげるよ」という返事でした。
先ほど最初にあったカラーのガーゼはその方法を応用したもので、緯糸のみカラーの糸を入れることで小ロットでいろんなカラーのガーゼを作ることで実現しました。ですから、拡大鏡でよおくみますとキナリの糸と色の糸がそれぞれ分かれているのです。でも一本一本の糸は細すぎて人間の目では簡単に区別できなくて2色の糸が混ざって見えるのです。2色の糸は相性がいいせいか、ケンカしないでうまく混じり合った色になり同じ色の糸を使うよりふんわりしたやさしい色になるのです。
もちろん、もっとはっきりとした色がいい、という方もいらっしゃると思いますが、育児工房ではそんなふんわりした2つの色が混じり合ったカラーが変化があって心地いいのではないかと考え、当時このガーゼを使っていました。最近は使用していないのですが、1つに見えるのに実は2つの色が入っている・・その不思議な色を味わっていただければと思います。
ガーゼではもうやめましたが、この手法は実はカットソー生地でも採用したモデルがあります。
どことなく複雑な色をしているような感じがしますので、赤ちゃんの脳への刺激にいいのでは、、なんて考えているのです。